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統合医療

治療  
 
適応疾患  
 
質問
​治療家 
 野口 池田  竹本​

疾病を治療し症状を緩和する方法には「対症療法」と「原因療法」があります。

これまで多くの医療機関などで実践されてきた医療は、「対症療法」を中心とした近代西洋医学を根本としてきました。

 

統合医療とは、二つの療法を統合することによって両者の特性を最大限に活かし、一人ひとりの患者様に最も適切な『オーダーメイド医療』を提供しようとするものです。

 

実際に、救命救急や外科手術などの臨床現場では近代西洋医学でしかなしえない治療が施されます。しかし一方で、一向に改善されない慢性疾患の治療、さらには近代西洋医学では治療不可能と言われた症状に対して、伝統医学の有効性が数多く報告されています。

また、超高齢社会が進み行く先進国においては、治療としての医療だけではなく、疾病予防領域も重要視されており、統合医療への期待度は益々高まると予想されています。

このように、治療と予防医療の両面から対症療法・原因療法を相互発展・連携させていく統合医療の推進が、近代国家であるここオランダ、日本にとっても急務となっております。

 

 
日本伝統医学 漢方、鍼灸、指圧 現代の医療

伝統医学の中で手技にあたる鍼灸、指圧、整体、活法等の伝統治療は、現代に生きる一般の皆様には、肩凝り、腰痛、膝痛など筋骨格のみの治療法と考えられがちですが、西暦600年頃に鍼博士が鍼灸を扱う医療職として設けられてから、明治維新によって西洋医学が国民医療として組み込まれるまでの約1260年間、漢方医と共に内科疾患から外科疾患まで広く対応し、戦国の時代には、刀弓傷などの疼痛緩和まで幅広く治療が行われていました。

 

平安時代の貴族の日記には灸治療のことがしばしば書かれ、戦国時代の武将達もお灸をすえ死地に赴いたようです。 有名な『徒然草』(吉田兼好)や、江戸期の『奥の細 道』(松尾芭蕉)でも養生の一環として足の三里へのお灸が紹介されています。現在でも日本はお灸の治療が盛んですが、それはこの頃からの伝統といえます。

 

室町時代に僧医や祈祷師が長く国の医療の一端を担っていたことは、私たち現代人には一見理解しがたい事ですが、「病は気から」という言葉もあるように、悪い呪いや神の怒りで病気になっていると信じられていました。

 

しかし病気の原因は何であれ、現代科学的に瞑想や祈りによる身体の変化を分析すると、集中して祈りの言葉を発している人は、横隔膜をよく使い呼吸は非常に深くなります。脳のあらゆる部分のシナプスやホルモンが反応し、それによって自律神経を安定させることが見られます。骨盤を起こして姿勢を正すことによって脊椎の圧迫を解放し、筋骨格の過緊張を取り除きます。正しい姿勢と自律神経のバランスがとれることにより、特に下腹部にある内臓器官の循環を改善させることは現代の様々な研究からも証明されています。

 

このように一つ見方を変えると、当時たとえ感染症や重篤な疾患であっても、瞑想や祈りにによって調えられた自然治癒力で、快方にむかう人が少なからずいたことは容易に想像できます。

 

江戸の後期、オランダから蘭学(西洋医学のもと)が伝えられました。ペニシリン、抗生物質、高度な外科的処置の出現により、多くの救急性の治療が必要な命が救われたことは紛れもない事実です。しかし同時に、劇的に身体に変化を起こす西洋医学を目の当たりにして、本来私たちが持っていた伝統医学の基本概念である、自分自身の自然治癒力を引き出し疾病を治すという考えが薄れ、すべての疾患に対して薬で原因を取り除き、外科的処置を施す明瞭簡潔な治療が特に明治維新から昭和にかけ瞬く間に日本中に広まります。

 

先端医療が進むと同時に診療の科が増え、その数だけ身体をパーツ別に診察することは伝統医学の基礎概念である、部分の症状は全身全体の影響で発生しているというものと相反することになりました。

 

特に風邪薬、咳止め、胃薬、頭痛薬、痛み止め、シップ、睡眠薬等の安易な服用は、免疫力、治癒力を恒常的に低下させ、自分自身で未来の病気の原因になりえるリスクを上げているといっても過言ではありません。

 

いくつかの研究や統計を見るかぎり、戦後の急速な食の欧米化、日本の多くの食品に含まれている添加物も少なからず身体に影響を与えていると考えられます。(厚生省が認可していても他の欧米では禁止している物も多数あります。ステビアなど) また、長時間のオフィスワークによる戦国時代とは異なる形のストレス、核家族や現代社会特有の複雑な人間関係、産業の変化により農業や物つくり等、外で活動する事が少なくなったことによる運動不足なども、本来の生物としての在り方から離れていっています。

大変残念な事に、時折私たちは皆一様に非常に利己的になりえます。時にそれは私たち国民の健康や命に関わる決定事項、取り決めに及び、密室の中でごく一部の権力や財力をもった人達のみに都合よく作られ、公的に社会に組み込まれてしまいます。

しかし、たとえどのような医療政策や生活環境であっても少なくとも私たち自身で学び、取捨選択でき、自分自身や周りの大切な人の健康にとって良いことを選べる時代にいることは、大変幸運ともいえます。

 

 

1400年の長い日本医療史をみるかぎり、長身になり平均寿命も延びましが、一つの生命体としてはまだ大きく変わってはいません。時代が急速に変わり、人工知能やクローンの発達、新薬ができたとしても人間の自然治癒力を個別につくることはまだ不可能であり、今の私たちの理解の範疇を超えています。想像する限り、人間がまるごと若返るようなものでもない限り、今はまだ先の話でしょう。

 

伝統医学は人の本質を見据えて発生し、祈祷の時代から最先端医療の時代であっても、今だ途切れることなく存在しているものです。いつの日かその時がくるまでは、決して変わることはない人の歴史の一部そのものだと言えます。

 

鍼灸とは伝統技術です

伝統的技術・技法とは数世代、100年以上の長きによって名家の中で継承され、改良され今日に 至ったものと言えます。その長い年月の中で、技術は練られ、変化し、枝分かれし、また融合し、それらを繰り返し、今は多くの流派のようなものに分かれています。

ここでどのような鍼灸が日本にあるのか簡単にご紹介します。中医学、中国はり、脈診に重点を置いた日本の経絡治療、西洋医学と東洋医学の融合を追求した長野式鍼灸、太極治療+特効穴治療の代表で澤田式鍼灸治療。良導絡治療、小児鍼、接触鍼治療, 積聚治療, 深谷式灸法、間中式イオンパンピング法、入江式経別経筋奇経療法、山元式新頭鍼療法、などその他にも書ききれない程の流派が日本に存在しています。

中国の国策の一つである中医学輸出が一早く行われた結果、現在欧米での鍼灸のスタンダードは中国針ですが、日本の伝統鍼灸は世界を見てもまれにない特殊な世界観をもっています。

 

中医学は弁証論治に基づいて、理路整然と施術が施されます。それゆえ問診が最も重視される傾向があります。これに対し「日本伝統鍼灸」は、問診と同様に感覚的なものも大変重視します。脈診・腹診・切経に加え、施術の方針を立てるにおいても目の付け所といった西洋人から見れば極めて曖昧ですが、日本人にとっては的確かつ単純化された治療目標を設定します。特に臨床で最も必要な触診によって、生体の反応を探す作業は、日本人独特の繊細さとこだわりがよく表れています。

また、観世流の能の舞台表現に「序・破・急」というものがあります。導入部の極めて静かな曲の序 の舞に始まり、展開部では動的変化に富んだ破の舞に転化し、終結部では短く躍動的な急の舞で盛り上げ、余韻を残しながら再び静寂へと戻ってゆく。能に限ら ず、歌舞伎・浄瑠璃・楽曲・講談など、日本の伝統文化には速度や演出の三区分として「序・破・急」があり、伝統文化の一つである鍼灸医学もその影響を深く受けています。

もともと日本人は議論や理屈を嫌う傾向があると言われ、鍼灸という場における、術者と患者との「気の遣り取り」を重視し、そこに「癒し」と「美」を表現しようとしていたのかもしれません。「日本鍼灸」の世界は、治療であると同時に「心身の癒し」であり、「芸能、芸術」の世界に非常に近いと言えます。

当院は、日本伝統医学の治療の一つである鍼灸が、最大限効果を発揮できる分野を追求し、目の前の患者様の苦悩を取り除く事に全力で努めます。

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